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沖縄公聴会を傍聴しました

2015.7.6. ノンフィクションライター 渡瀬夏彦

ひょんなことから、昨日7月6日、衆議院「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会地方参考委員会」による地方参考人会(於パシフィックホテル=那覇市)の傍聴人となった。

 5人の参考人(発言順に、稲嶺進・名護市長、大田昌秀・元沖縄県知事、古謝景春・南城市長、高嶺朝一・前琉球新報社長、中山義隆・石垣市長)の意見陳述と参考人に対する5人の衆議院議員(発言順に、宮﨑政久氏、辻元清美氏、下地幹郎氏、遠山清彦氏、赤嶺政賢氏)による質疑を傍聴したわけである。傍聴券を手配してくださった方々に感謝したい。

 

 散会直後には、わたしが発言に説得力を感じた参考人の一人、高嶺朝一・前琉球新報社長に個人的にじっくり話を聞くこともできた。おかげで、現役記者時代から有能な軍事・安全保障の専門家として知られていた高嶺氏が参考人を引き受け発言した真意を、より深く理解できたと思う。

 

 わたしを傍聴人に選んでくれた方々のためにも早く報告をまとめたかったのだが、眼前の仕事の都合もあって思うに任せず、恐縮である。

 

 すでに沖縄タイムスや琉球新報のホームページ、IWJなどで動画が配信されているので、もうご覧になった方もおられるだろう。

 

 ただ3時間すべてを視るのは容易なことではないかもしれない。また、全国メディアはなかなか詳細には報じない。

 

 こんな時には、改めてこう強調したくなる。

 

 全国の皆さん、沖縄の新聞を読みましょう!

 

 自民党の勉強会で百田尚樹氏(作家)から「本当に沖縄の2つの新聞社は絶対に潰さなあかん」と言われてしまった琉球新報、沖縄タイムスの全紙面がリアルタイムで読める「電子新聞」を、皆さん、ぜひ購読してください!

 

 沖縄からは、日本と世界がよーく見えるけれども、逆は困難なのですから。

 

 それはともかく、おくればせながら、この「沖縄での参考人会」に関する感想を、〈上〉〈下〉2回に分けて記しておこう。

 

              *

 

 傍聴席が少ないなぁ。それが会場に足を踏み入れての第一印象だった。

 

 参考人と質疑人に近い位置には記者席が何列も並んでおり、報道陣がひしめいている割には、傍聴人が少なすぎる。顔見知りの新聞記者から80人程度だと聞いて、やはり安倍政権にとっては「形」を作ることにこそが目的だったのだな、と感じた。また会場のホテルの駐車場に機動隊の大型車両が複数待機しているのを目の当たりにして、傍聴人を増やしたくなかった為政者側の思惑が察せられる気もした。

 

 それから余談にはなるが、当初、メディア公開は冒頭部分のみかもしれない、と聞かされていて、ならば小生は傍聴人として事細かに速報を発信せねばいかんか、と少々使命感のようなプレッシャーを覚えていたのだが、実際は完全動画配信を複数の社が行っていることがわかり、ひとまず安堵した次第。

 

 次に、衆議院特別委がなぜ沖縄で「地方参考人会」を開催したかを思った。

 

 これはすでに多くの人が指摘しているように、国会での審議日程の延長と合わせ「地方でも十分意見を聞いた」という口実の下に、安倍政権が、安保法案(=戦争法案)の近々の強行採決を睨んでいると見てよいだろうと思う。アリバイ作りである。

 

 この参考人会を開催したのは国会(衆議院)であり、その国会はもちろん、安保法制の早期成立を狙う自民党が圧倒的多数の議席を占めている。

 

 安倍自民党は、辺野古新基地建設反対の民意のうねりがクローズアップされがちな沖縄でさえ、この安保法案に賛成する自治体の長も少なからず存在しているのだということを、思いっきりアピールしたかったはずである。古謝南城市長と中山石垣市長は、間違いなくそのために、与党推薦参考人として呼ばれた。

 

 この点について、沖縄タイムス7月7日付の「識者評論」で、佐藤学・沖縄国際大学教授はこう指摘している。

 

《県市長会長の古謝景春南城市長と尖閣の地元である中山義隆石垣市長の発言を安倍政権は徹底的に利用するであろう》

 

 その意味は、安倍政権応援団たる読売新聞が、7月6日夜に早速YOMIURI ONLINEで配信した記事でこの部分を目立たせていることを見ても明らかだ。

 

《沖縄会場(那覇市)では、法案を巡り、出席した県内3市長の賛否が分かれた。与党推薦の中山義隆・石垣市長と古謝景春・南城市長は賛成の立場を表明、政府が法整備の理由として挙げる「安全保障環境の変化」に理解を示した。尖閣諸島周辺海域の警備強化などを求めている中山氏は、「(中国との間で)不測の事態が起きないとは言えない」と述べ、法整備による抑止力強化に期待感を示した》

 

 とてもわかりやすい。つまり、参考人として出席した3人の沖縄県の市長のうち2人が安保法案に賛成しているぞ、と強調しているわけだ。

 

 しかし、それが沖縄の民意を代表しているかと言えば、まるで違う。

 

 産経と並んで安倍政権の広報係たる読売が早速利用した発言の主、中山石垣市長は、例えば教科書採択問題でも、自民党タカ派文教族と緊密に連携して右翼教科書を導入するのに躍起になっていた人物である。わたしなどは、かねてより彼を、軍国主義的傾向を露わにする危険人物だと考えている。彼を勝たせてしまう石垣市民の「民意のレベル」も大いに疑わざるを得ない

 

 中山氏は、案の定安倍自民の受け売りそのもののような「安全保障環境の変化、厳しさ」をやたらと強調して、この戦争法案に賛意を示して見せた。

 

 すなわち最も鮮明に法案に賛意を示した参考人は彼であり、古謝南城市長は、慎重審議、自衛隊の武力行使の範囲に歯止めをかけることを求めつつも政府与党の方針に同意するという姿勢だった。まぁ自民党から支援を受けている首長なのだから当然であろう。

 

 この二人を戦争法案の賛同者として徹底利用するために中央から派遣された委員は、宮﨑政久衆議院議員(自民)だった。彼はよく「わたしたち沖縄県民は」といった物言いをすることで知られているが、わたしは同じヤマト出身の移住者として、しばしば恥ずかしくなる。

 

 百田氏の侮辱的暴言が生まれた勉強会を批判するときでさえ、「わたしたち沖縄県民も日本人です」なんぞという言葉を恥ずかしげもなく使う。あんたが言うなよ、である。凄惨な沖縄戦の重みも、軍隊を忌避する県民の心もわからぬヤマトゥンチュのあんたが言うなよ、安倍政権の手先として働くことにのみ一所懸命なあんたが言うなよ、である。宮﨑君!!

 

 質疑人の遠山清彦委員(公明)の物言いを聞きながら感じたのは、公明党はもう「平和の党」という看板を下ろすべきではないか、ということだ。与党の一員として、この法案は、安全保障環境の変化に対応するものであって、決して危険な法案ではない、と言う点を強調するために、古謝・中山両市長への誘導尋問に徹していた。

 

 つまり、今回の参考人会で、集団的自衛権行使容認を中心とする「戦争法案」をひたすら正当化しようとしたのは、参考人・質疑委員の10人のうち、宮﨑、遠山、中山、古謝の4氏だったのだ。この4氏が法案に賛同する理由は、説得力を欠いていた。あくまでも、北朝鮮や中国の脅威を誇張し、本当は個別的自衛権で解決できる話を、日米同盟を強化するためには仕方がないんだ、抑止力を高めるためには当然なんだ、というネット右翼諸君レベルの論理にすり替え、思考停止に陥っているとしか思えない。

 

 そのレベルの低い思考停止ぶりは、百田氏や同調する安倍首相に近い国会議員らと共通している。

 

 ただ、憲法9条を尊重する古謝氏の慎重姿勢は印象に残った。

 

 例えば赤嶺政賢氏(共産)から、「集団的自衛権の行使に道を開き、積極的に自衛隊が紛争地に出かけていくことの懸念」について問われた時、こう答えていた。

 

「憲法の平和主義、9条は未来永劫に守っていくべきだという考え方に変わりはない。平和憲法を堅持しながら国民、自衛隊の命をどう守っていくか、限定的なことに特化してガイドラインをマニュアル化してほしい」(古謝氏)

 

 沖縄戦の激戦地の首長として平和憲法を否定するわけにはいかない、という姿勢は、安倍政権の考え方にピッタリ寄り添おうとする石垣市長の中山氏のそれとは違う点である。ただ、その平和憲法に違反している法案だと多くの憲法学者が指摘しているわけである。その点への委員(国会議員)からの厳しいツッコミはなかった。

 

 特別委に参考人会の沖縄開催を提案したという下地幹郎氏(維新)の立場・姿勢は、わかりにくいままだった。自らが参考人として推薦した大田元知事から平和を希求する県民の心について謙虚に学ぶ姿勢を見せたものの、しかし法案に対する態度は曖昧なままであり、ここでは、「要注意」とだけ述べておきたい。

 

 大田氏は、戦争法案に関して議論するというよりも、沖縄戦の凄惨な体験、基地を押し付けられた歴史、さらには琉球処分に遡っての、日本の「道具」として「人間以下の存在」として利用されてきた沖縄県民の怒りについて、わかりやすく説明することに徹していたが、発言には重みがあった。

 

 参考人トップバッターの稲嶺進市長は、安保法案と辺野古新基地建設強行とは、根底で通じている話だと看破。

 

 発言冒頭で、安倍首相が4月の米国議会において、法案の今夏成立を約束した異常さを指摘し、真の主権国家とは程遠く、将来に禍根を残す」と批判した。

 

 その上で稲嶺氏は法案に反対する理由を4点、明確に示した。

 

1. 集団的自衛権行使のために法律を海底することは、憲法9条と前文の恒久的平和主義、平和的生存権を保障する基本原理に違反。

 

2. 憲法の改正手続きによらず、法律改定で実質的に憲法を否定するものであり、これは立憲主義に反する。自民党内の傲慢で独善的な考え方は、沖縄の主要選挙の辺野古反対の圧倒的な結果や県民世論を一顧だにしない。それが「辺野古が唯一の解決策」などという姿勢にも通じている。

 

3. 自衛隊と米軍が一緒に行動するようになれば、米軍基地が集中する沖縄はいの一番に狙われる。70年前の体験から沖縄県民はそれをよく知っている。再び沖縄が戦場になる事

 

4. 琉球処分以降、近代沖縄は苦難の歴史。太平洋戦争では捨石にされ、県民の4人に1人、軍人も合わせると20万人の命が奪われた。日本はサンフランシスコ講和条約で沖縄をアメリカに差し出し、日米安保に守られ、経済復興。安保の負担、リスクはほとんど沖縄に押し付けながら。1950年代の本土各地の反基地闘争の裏で、沖縄では銃剣とブルドーザーによる土地接収。常に防衛、外交の具として日本に振り回されてきた。

 

 そうして稲嶺市長は、現在も海保・機動隊が強権で住民を制圧する現状をも告発し、こう締めくくった。

 

「日本はいつか来た道を再び歩もうとしていると多くの国民が感じている。この法案は特に沖縄県民にとって看過できないものであり、強い懸念があることを重ねて伝えたい」

 

 大田氏と並んで、沖縄の歴史を踏まえた発言には重みがあり、説得力に満ちていた。

 

 赤嶺政賢氏から「安保体制がグローバル化することの懸念」を問われた時の返答も重要な言葉として印象に残った。

 

「ベトナム戦争時、沖縄はベトナムの人たちから悪魔の島と呼ばれた。辺野古の新基地ができて運用され、グローバルな戦略環境の中で使われると、沖縄は世界中から悪魔の島と呼ばれかねない」

 

 歴史から学ぶことも戦争の凄惨さへの想像力も働かすことのできないくせに仲間意識だけは強い40代の国会議員&市長との、言葉の重みの差は歴然としていた。

 

 最後になったが、高嶺朝一・琉球新報前社長の発言は、じっくり紹介したい。

 

 稲嶺氏や大田氏同様、沖縄の苦難の歴史を踏まえた上で、自身の長年の軍事ジャーナリストとしての経験と知識を盛り込みつつの提言に、わたしは最も説得力と新鮮さとを感じたのである。閉会後に個人的に小一時間話し込み、インタビューできた内容も含めて記してみたい。

 

つづきはこちらで読めます。http://watanatsu.ti-da.net/
 
渡瀬夏彦 natsuhiko watase 
ノンフィクションライター
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